今年のテト
サイゴンに電車でノロノロ36時間かけて行くという計画はベトナムに来て地球の歩き方を読んでいる時にいつかやりたいと思っていたことだった。
Lyはテト中も仕事をしているので前半戦はこれだ!と言って勇んでチケットを買いに行った。
何度も前を通り過ぎるだけだったハノイ中央駅は入ってみると、予想通り大したことはない空間だったが高い天井とそこそこ広い待合ホールが旅の雰囲気を醸し出していてすっかりハッピーになった。
3段ベッド2列の寝台で1.1Mill程度。思いの外高かった。
しかしそれから数日後にHai duongで突如コロナがアウトブレイクして旅行どころではなくなり結局チケットを返金してもらった。のんびりと旅行でもしたいと思っていたからかなり残念だったが、そこで出来た時間を使って日本の仕事をした。
商品化住宅の提案というもので、ベトナムに来る前は日本で4年、建売住宅も含めて実施設計をしていたし、ベトナムに来てから改めて日本の住宅産業について思うこともあり、楽しんで設計することが出来た。
なれないRevitを使いながらなんとかそれなりのアウトプットが出来たが、まだまだ学生に毛が生えたような出来だったので今後はプレゼン用のアウトプットもコツコツ学んでいきたい。
後半はLyと一緒にThanh Hoaに帰った。
前回は犬に噛まれたり警察に連行されたりと盛りだくさんだったが、今回はコロナと警察の心配があったので直前まで行けるかどうか分からなかったが、Lyの実家で家族皆に会って食卓を囲んで良い時を過ごすことが出来た。
旅行中に読んだ本が「ベトナムの風に吹かれて」という認知症になった母を新潟の田舎からハノイに連れてきて天寿を全うするまで12年間(くらい)一緒に過ごした、という日本人女性の実録ルポだった。
将来的には親を持つ誰しもが直面する話なのだが、生まれ育った小京都は全く異なる国の文化の中で鮮やかな生活を過ごされていたことが目に浮かび、あっという間に読み終わった。
多少の不自由はあるも、生きていくには快適なこの街でボケてしまった母親を介護しながら生活するのはコロンブスの卵的な感じであるが、老人ホームでTVを見てボケていく姥捨よりずっと幸せだな、と思った。
この本の中に著書が長いベトナム生活で直面したあれこれが書かれていたのだが、20年前くらいは郊外に行くにも外国人は通行許可が必要とか色々と書かれており、前回警察に逮捕されて憤慨していた気持ちがだいぶ和らいだ。
Thanh Hoaにいる間に日本人がサイゴンで2周間の隔離を終えてハノイにやってきて数日後にホテルで死体で見つかったというニュースがあった。その記事を読んだLyが急に日本人事態を危険視していたことに憤慨し、その晩は口も聞かなかった。
諸外国と比べてコロナを抑え込んでいるベトナムは共産党の一党主導で時には強権もふるいコントロールしたおかげ、という見方があるが、それは紛れもない事実だ。だが、それ以前に人々がこのウイルスを大いに恐れているという前提が諸外国と大きく異る点だ。今回もテト休暇前で皆故郷に帰るとか、旅行に行くとかと大騒ぎをしていたところに再びコロナの恐怖がやってきたので、同僚からはもしサイゴンやThanh Hoaに行くのなら事務所に戻ってきてくれるな、とまで言われた。
これには若干ショックを受けたが、皆多少なりともこのくらい真剣に恐れている。
がしかし、時としてこの恐れが間違った恐れ方をすることが多々あることも事実だ。
亡くなった日本人は死後の検査でコロナ陽性が判明したので、未だに死因がコロナだったのかも不明であるにも関わらず、今の世論は日本人は警戒せよ、という風潮だ。
露天商やカラオケ、クラブなどは営業禁止で街には活気がまったくない。
朝も夜も道はガラガラで、みんなどこに行ってしまったのか、という感じ。
テトで故郷から帰って来ていないのか、自主的なソフトロックダウンなのかよくわからないが、うす気味が悪い。
そんな今日、昼食後に事務所の近くで散髪をした。
知っているベトナム語を総動員してなんとか面白おかしく美容師のお姉さん(47歳だけど彼氏募集中とのことなのでおばさんとは呼ばないことにする)と話をしていたのだが、日本人とわかった途端名前はなんだ、とかこの日本人と会ったかとかいろいろ詮索され、容疑者扱いされてしまった。
彼女らは悪気も何もなく、至極単純な(飛躍した)三段論法の上で会話をしているので、憎たらしいとかムカつくとかそういう気にはならないのだが、それが差別につながる過激な発想であることを気づいていないことが怖い。
自分がプチコロナ差別体験をしたことでようやく世界中で起こっているあらゆる悲しい副作用の深刻さを知った。
コロナとは関係ないが、このお姉さんはThanh Hoaの人は嫌いだと平然と言ってのけた。理由を聞いたら嫌いだから、と。その後金にがめついとか自己中心的だからだという話をしていたが、これにも改めて驚いた。
Thanh Hoa人嫌い事件は今までに何度も遭遇しているのでまたかという感じであったが、このあけすけのなさは時として人を傷つけるということをみんな知ったほうが良い。
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