道を渡っている
道を渡っている。
何の目的も持たず真っ直ぐ前を向いている。
中型トラックが止まることを知らない、当然の権利を持ったスピードでやってきて、
何事もなかったかのようにはねていく。
それはトラックにはねられるというよりも、押しつぶされ、突然の平行移動を意味する。
空ではたかれた羽虫のような軽さだ。
そんな風に死にたいとよく思う。
とはいえこれは肉体の死を幻想する生の精神に過ぎない。
実際に事故にあってみるとこんなことを考えていることの恐ろしさー自分の肉体という現実への無知に対する羞恥からーを感じずにはいられない。
昨日の朝タクシーにほんの少しぶつかっただけであったが、やはり重さとスピードに対しての危機感が摩耗しつくしていることを思い知らされた。
生を貪ることをそろそろやめなければならないかもしれない。