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テンポラリーライフ

日本人の精神性には鴨長明からつながる無常観というか、インスタントなライフを志す部分があると言われているが(適当)、自分にはまさにその血が流れていると思う。

備忘録のため方丈記の始まりの部分をコピペしておこう。


ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。

よどみにうかぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。

世の中にある人と棲(すみか)と、又かくの如し。


ベトナムに来てからは特にそのインスタントなライフというか人生観を意識するようになり、外国に住んでいることもあり、不動産とは遠く離れた(父が不動産屋であることは関係ない)軽い存在をキープしたいと思っていた。

なので、一年目は植物を育てることもせず(あの家の真っ暗なバルコニーでは育てる気も起きないのは当然か)荷物も少なく、引っ越しの際にはものの5分で片付けが完了してバイクの2回往復でことが済んだ。

二軒目の家は庭付きで自分の部屋は1階だったので、これからどんな植物を育ててどんなランドスケープを作ろうかと考えているうちに追い出されてしまった。

ついに3軒目では北側と東側にバルコニーがあり、それぞれで植物や野菜を育てて、魚まで飼い始めた。一年弱でここも追い出され、今の家に落ち着いたわけだが、ここのバルコニーは今までのものよりも比べて大きいし、陽当たりも良いので調子に乗ってどんどんと植物を増やしている。亀も飼い始めた。(つい最近あまりの暑さに耐えきれず死んでしまった。朝、外に出したまま仕事にでかけてしまった。申し訳ないことをした。。。)

なので、引っ越しは回を重ねるごとに荷物も多くなり、当初標榜していたインスタントとはかけ離れてきた。その上、Lyという存在によって自分がベトナムに住んでいる理由が仕事だけでなくなり、一緒に暮らし始めたこともあり、将来のことや、生活用品などいろいろなものが身にまとわりつき、根っこが生えてきていることを意識せざるを得なくなってきていた。

そんなさなか、事務所の労働契約の更新やらビザの更新やらで、テンポラリーレジデンシャルカードなるものの更新をしなければならないということになった。

このとき、意外にも「あー自分はまだテンポラリーなのか」という感慨を得た。一年目に比べてだいぶこの地に根っこが生えてきてしまっていたことに不安も感じていたのだが、いざテンポラリーなレジデンシャルだということを突きつけられると、それはそれで少しさみしい気持ちにもなったのだった。

結局、書類手続きに手間がかかって労働許可証は1週遅れ、テンポラリーレジデンスカードは3週遅れとなり、その間(たった今もそう)私は不法滞在者なのである。

警察に止められたりすると厄介なので、毎日コソコソ暮らしている。


数週間前に外務省からメールで、海外在住の邦人向けのワクチンについてのアンケートが送られてきた。ようやく自分がおかれている(おいている)環境にもスポットライトが当たり始めたかと小躍りしていた。そして数日前に、日本に住民票を有していない邦人向けにワクチン接種を始めるプログラムが8月1日から始まるというメールが送られてきた。

こっちの給料では、住んでいない日本の税金やら年金、保険なんぞを払っていたらとてもじゃないけど生活できないし、そもそもそういうことはインスタントなライフを志すものとしては潔く切り離すべしということで、自分は日本に住民票を有していない。

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