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デザインと建築家、クライアントについて

ここのところ建築家がどのようにしてデザインをするべきかという議論があり、自分の考え方が形成されつつあるので備忘録として。


"Architecture design can change the world. Architecture design can make the world a better place."

こういうことを言う建築家はごまんといるし、スタッフに対して自分も時々こういうことをいう。

たとえば、エッフェルタワーは当初パリジャンには忌み嫌われていたが、万博の成功を受けて、一気に人気者になり、市民の誇りとなり、いまとなっては国のアイコンに昇華した。これはひとえにデザインと技術の勝利といえるだろう。この場合、たしかに建築は世界を変え、そして世界を少し良くしたと言える。


翻って、小さな住宅やレストランの内装をやっていてどうやって世界をよくできるのか?建築資材によって地球をどんどん汚染しているというのに。素晴らしいデザインの住宅で朝起きた施主が一日を気持ちよく過ごすことができたならそれはその一人の1日が幸せになったことで世界を良くしたと言えるし、レストランに食事に来た100人のお客さんが素晴らしいデザインを堪能してその晩ハッピーに床についたら世界を良くしたと言える。だが、ちょっと待て。そんなに小さなことで世界が良くなるならマクドナルドでスマイルをもらっただけでも世界は良くなったと言えるし、マクドナルドは世界中にあるから幸せにできる人の数も一つの建築を使ったり訪れる何千万倍多いだろう。2つの異なるスケールの話で、いずれも否定はしないが、そんなことを言っているのは偽善かアホのどちらかだと切り捨ててしまっても良いだろう。結局言葉の綾に過ぎない。


本当に世界を良くする建築やデザインがあるのだとしたら、それはもっと経済的とか環境的なインパクトが大きいものだろう。

それくらい割り切ってしまえば見える視点がもう少しクリアになってくるだろう。

住宅の設計をするのならば、そこに住む人が幸せになることをもう少し真剣に考えるべきだろう。世界がどうとかいう大義名分や壮大な幻想は端に置いておいて。




次に、建築家はどれくらい施主の言うことを聞くべきか。

住宅の設計をしていると施主のエゴと建築家のエゴが対立し、平行線をたどることがしばしばある。

お互いの経験と信じるものが異なるのだからそれは仕方がないし、施主はお金を出しているのだから自分のやりたいようにやれ!と思うのは至極まっとうだ。だが、お金を出してまで建築家に頼んでいるのだから建築家の意見をもう少し尊重すべきではないのか?


こんなことを知り合いの建築家に話したところ、以下のような回答をもらった。


①建築家が施主をリードするべきで、同じ立場に立って話し合いをする必要はまったくない

②施主=素人の意見などゴミクズで、プロの建築家の経験と鍛錬によったデザインが優れているに決まっている


1番に対しては確かにおっしゃるとおりだと思った。プロとしての自覚というか、責任にもつながる素晴らしい姿勢だと思った。たとえば2つのオプションを用意して施主に選んでもらって、失敗したら施主のせいにするのはデザインに対する責任を逃れている、悪しき建築家がすることで、優れた建築家は良いデザインを施主に理解させる必要がある、と別の建築家が言っていたのを思い出した。当時は半信半疑だったが、その後色々と経験をしてきたので、この重要さが理解できるようになった。


2番に対してはこのような反論をした。では、建築家さん。あなたの家や寝室を参考事例としてクライアントに見せることができますか?クライアントが自分よりも遥かに素晴らしい建築空間を経験している場合にも自信を持って自分のデザインが優れていると言えますか?

1つ目の質問に対してはNo。2つ目の質問に対してはAbsolutely YES!という回答であった。

なぜそんなことを聞いたかというと、建築家は素晴らしいデザインを作れるかもしれないが、自信の経験や体験無くして良いデザインはできないという立脚点に立っていることがある。多くの建築家が(自分も含めて)どうにもならない洒落っ気ゼロでしみったれたアパートに住んでいる。そんな人に、あなたの寝室は照明をもっと暗くして、ここには家具は置かないで、窓はもっと大きくして、クローゼットは要らないのでその代わりに大きなスペースを確保しましょう、そうしたら快適でラグジュリアスなライフスタイルになりますとか言われてどれだけの信憑性があるというのか。その建築家が10軒も100軒も住宅を設計していたとしても、自分がその空間を体験していなければ、結局雑誌を見てかっこいいと言っているのと大差がないと思うのである。

もちろん、素人のクライアントが抱く夢とかレファレンスが建築家の知識と実践に勝るとは自分も思わないが、強硬に自分のデザインを押し付けるのであれば、雑誌や本から勉強した空間を本気で自分自信が経験=実践してからにしてほしい。でなければインスタグラムを見てかっこいいと言っている素人と大差がない。

建築模型や3Dレンダリングなどでプレゼンでーしょんができるが、素人のクライアントはその良さを本当にわからないかもしれないし、空間体験として想像することは難しい。なので、最も信憑性があるのは設計した空間(かつ、自分が使用するもの)で施主と一緒に時間を過ごすことだろう。



まとめてみると、

①建築家はデザインのプロとしてデザインの責任を持ち、クライアントをリードする

②そのためには建築家は自分自身の空間経験を豊かにしていくべき

③クライアントと価値観を共有する努力をする


もしかしたら5年後には全く正反対のことを言っているかもしれないが、これが現状自分自身の考える建築家としての指針だ!



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