胃がんステージ4
祖母の調子が悪いということで母が病院に連れて行ったら緊急入院になったという。
血液の検査をしたら生きている人間でこんな値は見たことがないと医者に言われ、血液に関連する部分がかなり悪いということがわかったという。
その後胃カメラの検査をしたら巨大なガンを発見。
胃がんステージ4と診断されたらしい。
海外に暮らすことを決意したとき二人の祖母がいて、両親の家には犬がいた。
犬はしゃべれないし、電話も出来ないので物理的な距離は決定的な別離となる。
祖母は80代後半で健康だったがいつ何が起こってもおかしくない。
父方の祖母はこっちに来てから半年くらいたったころに危篤状態になったので飛んで帰って挨拶をしに行った。
その数か月後に亡くなった。
葬式は興味がないし、亡くなる前に一度会えて気持ちの整理ができていた。
いま、ガンがわかった母方の祖母には生きているうちに会えるのかわからない。
コロナの影響で本当にまったく見通しがつかない。
もちろん、すべてを放り出して日本に帰ればいいのだが、海外で働く社会人はそうも簡単にいかない。
とにかく、このニュースを聞いてからはつらかったのだが、本人にも告知してあるということだったので連絡を入れた。
退院おめでとう、みたいな当たり障りないメッセージを送ってみたのだが、なんとも他人行儀というか自分のお気に入りの祖母に対してのメッセージとははなはだ感じられない代物だったので、はっきりと本音を語った。
まったく、胃がんステージ4なんて考えられない、と。
そうしたら向こうからあたしも信じられないよ、と返ってきた。
これは果たしてどのように受け止めるべきか。自暴自棄になっているのか、落ち込んでいるのか、それともいつも通りの感じなのか測りかねる。
コロナのせいで簡単には日本に帰れないのだが、自分が帰るまで元気にしていてくれと言ったら心配ない、しっかり仕事をしなさいと言われた。
まったく、このメッセージを見たときはうれしさと悲しさとが同時にこみあげてきた。
母方の祖父は自分が生まれる前に亡くなっており、祖母は以来ずっと一人暮らしをしている。
料理上手で、孫のこともあまりスポイルしない(小さい頃はお年玉も500円くらいしかくれなかった)、気難しい人なのだが、小さい時からなんとなく親近感を覚えていた。
多少大人になって自分とは何者かとか自分はどんな人間かと考えるようになってからは彼女との類似を多く見出していた。
一見気難しいのだが、慈愛があり、何人にも平等であること。そして怒りをエネルギー源として強く生きているひとだ。
近年になってボケ始めてからは被害妄想がひどくてなかなか簡単に会えなかったが、数多ある被害妄想ストーリーのなかでも自分は犯人扱いされたことがなかった。
たぶん彼女も自分のことを同類とみなしてくれているのだろう。
子供の時に夏休みの自由研究で黒蜜はなぜきな粉に簡単に混ざらないのか、というテーマを設定しようとしたときに、ちょうど祖母の家で家族と話をしており、父母姉は揃いにそろってこのテーマを馬鹿にして笑っていた。
小学生の自分としては悔しいやら自信がなくなるやらで困っていたのだが、この時は祖母が力強く自分の背中を押してくれた。
結局この研究では小さな賞をもらうことになった。
この時も、子供だからと言って馬鹿にしたりせずに、非常にフェアに向き合ってくれたのだと思う。
良い思い出ばかりを思い出すものだが、まあそれはそういう風に人間の脳みそがプログラミングされているからで、悪い思い出を引っ張り出すより幸せだからよいのだ。
一刻も早く、国をまたいだ往来が正常化することを願ってやまない。
この祖母はLyのお母さんにも通ずるところがあり、そこにも何か親近感を覚えているのだ。
そのお母さんは昨日三回目のワクチンを打ったと電話で話していたのだが、いったいThanh Hoaでは何が起こっているのか!?
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