映画「世界大戦争」とワニの夢

日経の記事伝いでここのところ押井守の映画評論を読んでいる。

その中で取り上げられていた「世界大戦争」を見てみた。

ストーリーとしては、戦後復興を遂げて右肩上がりの経済成長の中、明るい未来を信じる日本国民であったが、38度線の軍事衝突が起こったことで一気に核戦争が勃発し、、、というものだ。

押井守の面白い物言いにかなり影響されてしまっているのでこれ以上詳細を書くことは控えるが、この映画で最も美しかったのは洋上にいる彼氏(一応出発前夜に結婚したことになっている)に向かって無線で連絡をとると、彼氏からは

「サエコ・サエコ・コウフクダッタネ」

という無線が届く。当然この時代には携帯電話なんてなかったので遠くにいる、しかも洋上にいる彼と連絡をとるには無線しか方法がなく、そのために頑張ってこの女の子はアマチュア無線の免許をとった。

核戦争が始まり、もう東京の被爆は避けられない(中立国っぽく振る舞っていたのになんでいの一番に攻撃されたのかはわからないが)、となったときに彼女は彼に連絡する。

もし自分が彼女だったら

「オネガイ タスケニキテ」

とか言って彼氏を困らせてしまうか。

「アイシテル」

とか言ってまた彼氏を困らせてしまうだろう。

もし自分が彼氏だったら、

「ムカエニイク」

とか無責任なことを言って船長と喧嘩するかもしれない。いや、それはないか。

じゃなかったら

「アイシテル」

とか言ってまた彼女を困らせてしまうだろう。

宝田明(彼氏)が立派なのは、自分たちの将来はもう全く無い、ということを理解し、それを共有し、その上で自分たちの過去を慈しむ、という高度なメッセージをこの数単語のなかに込めていることだ。背も高いしかっこいいし、優しそうだし、優秀そうだし、もう完璧くんだ。

そのメッセージを受け取った星由里子はそれをしっかりと胸に抱いて、噛みしめる。多分悲しさと嬉しさはんぶんこといったところだろうか。冷静に考えられるわけはないのだが。

それで会話は終了。

星由里子は一瞬にして水蒸気になって、宝田明はそれを洋上から見ている。

現代のカップルだったらもう少し湿っぽく、最後までなんとか、とか言いそうなのだが、もう「コウフクダッタネ」と宣言してしまったからにはそれ以上話すことはないのだ。それを胸に抱いて未来を受け入れるしか無い。

その後に、まだやるせなさの残る星由里子は最後の晩餐の際にも口を利かず、食べ物にも手を付けない。まあ、普通の大人だったら普通の反応だろうが。

だけど、その後両親が植えてくれていたチューリップの花の芽が出ていないことに反応し、私達のために咲く花は私達がこの世界からいなくなってから咲くのだわ、というようなことを言う。

これは、土の中にいる植物は核戦争の後でも生き残る可能性がある=未来への希望とも受け取れるし、

劇中ずっと冷静で現実的なものの見方をしてきた彼女だからこその皮肉とも取れる。

みんないなくなった後に、咲くチューリップの姿を思い浮かべるとなかなかロマンチックだ。Wall-Eにもつながるか。

感染症の後は戦争か、と言われそうだが、人間の過ちというかそういうものに対しての悲しさとやるせなさ、そしてその中にある一握りの愛の希望、というテーマ観をもってここのところ映画を見ているのでなかなか面白く、勉強になるのだ。

そんな世界大戦争を見た晩の夢では浅い川にワニとラッコの大きいやつが泳いでいる夢を見た。

Ly曰くそれはアフリカに違いないということだ。

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